研究概要の設問で落ちる原因の大半は、研究のレベルではなく「読み手に届いていない」ことです。読むのは研究者ではなく人事で、企業が見ているのは研究の凄さより、複雑なことを分かりやすく伝える力です。この記事は、その変換をAIに手伝わせるプロンプト3本をまず先に並べます。理屈は後半に置いたので、締切が近い人は最初の見出しのプロンプトをコピーして、自分の研究説明を貼るところから始めてください。
この記事でわかること:
- コピペで使える「研究概要→ESの言葉」変換プロンプト3本
- 通じない語の特定→平易化→文字数別圧縮の使い方と、正確さを守る検証
- AIの言い換えが研究内容を歪めるのを防ぐ落とし穴と、提出前チェック
そのまま使える変換プロンプト3本(コピペで研究概要を翻訳)
順番が大事です。①で通じない語を洗い出し、②で言い換え候補を作り、③で字数に圧縮しながら面接準備まで済ませます。同じチャットで①→②→③と続けて使ってください。使う前に、事実と数値は自分で提供する・個人情報は入力しない・生成文の事実は必ず突き合わせる、の3点だけ守ります。
プロンプト①:通じない言葉を特定する(まず診断だけ)
あなたは理系の研究内容を就活書類向けに翻訳する編集者です。
目的: 私の研究説明のうち、専門外の人に通じない言葉を特定すること。言い換えはまだしない。
以下の説明を読み、
1. 私の分野を専攻していない大学生に通じない可能性が高い語を、通じにくい順にすべて列挙する
2. それぞれに「なぜ通じないか」を一言添える(概念自体が未知/日常語と意味が違う/略語・記号 など)
3. 逆に、専門用語に見えるが説明なしで使ってよい語があれば挙げる
制約: 言い換え案や書き直し文はまだ出さないこと。
【研究説明を貼る(研究室で普段使う言葉のままでよい)】
使い方のポイント:「言い換えはまだしない」で診断だけを受け取る。自分で説明を考える工程を飛ばさないための制約です。
プロンプト②:平易な言い換えを検証しながら作る
あなたは科学記事のライターで、専門的な内容を正確さを保ったまま一般読者に説明するのが得意です。
目的: 次の専門用語・概念の言い換え候補を作ること。
進め方:
1. 各用語について、言い換え候補を3案ずつ出す(日常語での説明/たとえ/働き・機能の説明、の3方向)
2. 各案について「正確さを犠牲にしている点」があれば正直に注記する
3. 私が案を選んだら、書き直しに進む前に「この言い換えで誤解が生じる場面はないか」を私に1つ質問する
用語リスト: 【プロンプト①で特定された用語】
私の研究の文脈: 【1〜2文で】
使い方のポイント:3方向で候補を出させ、正確さの注記を見て自分が採否を決める。たとえは必ず何かを捨てるので、捨ててよいかの判定は専門家のあなたにしかできません。
プロンプト③:文字数別に圧縮し、深掘りに備える
あなたは新卒採用で研究概要を読み慣れた人事担当者です。
目的: 以下の研究概要を指定字数に圧縮し、面接の深掘りに備えること。
進め方:
1. 以下の文章を400字版と200字版に圧縮する。優先して残す順番は「何を明らかにしたいか→なぜ重要か→自分が工夫した点」。手法の詳細から先に削る
2. 圧縮で削った内容を「面接で口頭補足する材料リスト」として箇条書きにする
3. この研究概要を読んだ面接官が聞きそうな質問を、非専門の人事の視点で5つ出す
制約: 研究内容の事実を追加・変更しないこと。数値・専門用語は元の文章にあるものだけを使うこと。
【平易化した研究説明の全文を貼る】
使い方のポイント:削る作業を「捨てる」ではなく「面接に回す」に変える。材料リストと想定質問5つが、そのまま口頭説明の練習素材になります。
この3本を一度メールで受け取っておきたい人は、記事中盤のフォームからコピペ用のプロンプト集を送っています。以下は、各プロンプトをなぜこの設計にしたのか、実行例を交えた使いこなしの解説です。
まず分担を決める:研究はあなたが語り、AIは「翻訳」だけ
3本のプロンプトが効くのは、AIの役割を「文章を作る」ではなく「専門の言葉と日常の言葉の翻訳」に限定しているからです。工程ごとの分担を先に決めておきます。
| 工程 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 研究内容・事実の提供 | 自分 | AIはあなたの研究を知らない。内部知識で補わせると誤りが混ざる |
| 通じない語の特定 | AI | 自分では「どれが専門用語か」の感覚が麻痺している |
| 言い換え候補の生成 | AI | 比喩や日常語への変換は生成AIの得意分野 |
| 言い換えの正確さの判定 | 自分 | 平易化で研究内容が歪んでいないかは、専門家のあなたにしか分からない |
| 最終的な文章と提出の責任 | 自分 | 面接で深掘りされるのは自分 |
この分担を崩して「研究概要を書いて」と丸投げすると、それらしいが微妙に違う説明文ができあがり、面接の「もう少し詳しく教えてください」で本人の説明と食い違います。研究概要は本人が世界で一番詳しい題材なので、丸投げのメリットが最も小さく、破綻したときの不自然さが最も大きい設問だと考えてください。
なぜ伝わらないのか:読み手は人事、評価軸は「伝える力」
前提を2つ押さえます。第一に、ESの研究概要を最初に読むのは、多くの場合あなたの分野の専門家ではない人事や採用担当です。研究職の選考でも、一次の読み手が非専門であることは珍しくありません。第二に、企業がこの設問で見ているのは、研究テーマの市場価値よりも、論理的に考える力と、複雑なことを相手に合わせて説明する力です。
つまり「専門用語を正確に使った密度の高い説明」は、この設問では減点方向に働きます。書く順番の基本形は次の通りです。
- 何を明らかにしようとしている研究か(結論・一言サマリー)
- なぜそれが重要か(背景を日常の言葉で)
- 自分はどう取り組んでいるか(手法は「何をしているか」レベルで)
- 分かったこと・工夫した点(進行中なら計画と現状)
- この経験を仕事でどう活かすか(職種と接続)
構成はこれで固定してよいので、残る問題は各パーツを「通じる言葉」で書けるかです。ここが3本のプロンプトの担当範囲です。
プロンプト①の使いこなし:通じない語の「気づけなさ」を外す
平易化の失敗パターンは、いきなり言い換えを始めることです。自分ではどの語が通じないのか判定できないまま書き直すので、「界面」「発現」のような、専門側では日常語すぎて気づけない語が残ります。だからプロンプト①は特定だけをさせます。
実行例のイメージ:「固体電解質の界面抵抗を低減する研究です」という一文に対して、「固体電解質(概念自体が未知)」「界面(日常語の『境界』と学術的な意味がずれる)」「抵抗(電気の文脈だと通じるが低減とセットでは硬い)」のように、通じない語が理由付きで並びます。多くの人はここで、1文に3〜5個も壁があったことに初めて気づきます。リストを受け取ったら、各語を自分ならどう説明するか、一度メモしてから次へ進んでください。
プロンプト②の使いこなし:正確さは注記で守る
特定した語を1つずつ翻訳しますが、ここでのポイントは、言い換え案を複数もらい、正確さを自分が検証することです。3方向で出させるのは、用語によって効く変換が違うからです。物質名は「働きの説明」(電気を通す固体の材料)が、プロセスは「たとえ」(部品同士の継ぎ目で電気が渋滞する)が効きやすい傾向があります。
そして最重要なのが2番の注記です。たとえは必ず何かを捨てて成立します。捨てたものが研究の本質でないかを判定できるのは、AIではなくあなたです。「渋滞」のたとえが抵抗の仕組みとして誤解を生むと感じたら、その案は捨てる。この取捨選択の記録は、そのまま面接で「分かりやすく言うと◯◯ですが、正確には△△です」と答える材料になります。